風呂場に棲む垢の妖怪
あかなめ
垢嘗 / 垢舐 / 垢ねぶり / 安加禰布理
誰もいない夜の風呂場で、桶のふちを舐める湿った音だけがする。垢を残した者だけが、その長い舌と目を合わせる。
垢ねぶりといふ物は、ふるき風呂屋にすむばけものゝよし
古今百物語評判
概要
あかなめは、夜の風呂場に現れて桶や湯殿の垢を嘗める妖怪。江戸期の「垢ねぶり」や鳥山石燕の「垢嘗」とつながる存在で、汚れを放置した場所に怪異が寄るという戒めを、童子のような姿に託している。恐怖よりも不潔への嫌悪が前面に出る妖怪である。
出現
家人が寝静まった夜、掃除の行き届かない風呂場や古い屋敷の湯殿に忍び込む。湯気の消えた桶、濡れた床、隅に残った垢の匂いをたどって現れ、人の足音や灯りを察すると、戸の陰や板壁の奥へすばやく消える。現れるのは決まって、人の目が届かない湿った場所である。
伝承
山岡元隣『古今百物語評判』巻之二第六「垢ねぶりの事」に、古い風呂屋や荒れ屋敷に棲む妖怪として類例が見える。鳥山石燕『画図百鬼夜行』では「垢嘗」として図像化され、江戸期の妖怪資料に定着した。石燕の図には詳しい詞書はなく、名称と姿が中心である。
特徴
乱れ髪の童子に似た姿で、足には鉤爪を持ち、体より長い舌を伸ばして垢を嘗め取る。人を襲うよりも汚れに引き寄せられる性質が強く、垢を食らうほどその場に居座る。湯殿を磨き上げれば餌を失い、自然と離れていく。汚れを残すほど、夜ごとの気配は濃くなる。