仏壇の闇から現れる黒い僧
塗仏
ぬりぼとけ / ぬり仏 / 黒坊
仏壇の戸が、誰も触れぬのに開く。黒い僧の顔から垂れた両眼だけが、埃をかぶった位牌を見つめている。
概要
塗仏は、黒い坊主姿と垂れ下がった両眼で知られる古典妖怪。江戸期の絵巻や鳥山石燕の画集に描かれるが、由来を説明する詞書は残らない。だからこそ、仏壇から現れる姿そのものが強い印象を持つ。説明の空白が不気味さを増している。
出現
古い屋敷の仏壇や暗い室内から、黒く塗られた僧形の姿でぬっと現れる。石燕の図では仏壇の奥から身を乗り出す構図で描かれ、家人が拝む場所、祖霊を祀る場所の暗がりに突然異物が立つ恐怖を帯びている。扉の隙間と灯明の影が出現の合図になる。
伝承
佐脇嵩之『百怪図巻』や鳥山石燕『画図百鬼夜行』に描かれる。原資料はいずれも図像と名称が中心で、性質や由来の説明は残されていない。そのため、仏壇や器物精霊に関する説明の多くは後世の解釈である。古典では、まず絵が先に立つ妖怪である。
特徴
全身は黒く、両の目玉が眼窩から垂れ下がる。仏壇の暗がりに潜み、粗末に扱われた仏具や位牌の前で無言のまま現れる。声も足音もなく、ただ垂れた目だけが動き、見た者をその場に凍りつかせる。動きは鈍いが、視線の圧だけで逃げ場を奪う。