鳥居の上から落ちて戒める毛むくじゃら
おとろし
おどろおどろ / 毛一杯 / おとろん / ししこり
苔むした鳥居を、不信心な足がくぐる。頭上の毛の塊がぶるりと震え、次の刹那、ドサリ――。神を忘れた者の背に、忘れられた守り手が落ちてくる。
概要
おとろしは、江戸時代の妖怪絵巻に描かれる毛むくじゃらの妖怪。長い髪と垂れた前髪に顔を覆われ、鬼に似た恐ろしげな姿をとる。鳥山石燕『画図百鬼夜行』では神社の鳥居の上に乗る姿で描かれた。神域を守り、不信心な者を戒めるという語りが後世に付された。
出現
竹藪の中の古家の土塀の上や、人に忘れられた古い神社の鳥居の上に、うずくまるようにして潜む。廃屋の中を覗き込もうとする者や、鳥居をくぐる不信心な者の頭上へ、もの凄い音とともにドーンと落ちてくるという。人けの絶えた場所ほど、その気配は濃くなる。
伝承
おとろしは佐脇嵩之『百怪図巻』や鳥山石燕『画図百鬼夜行』など複数の江戸期絵巻に登場するが、いずれも名称のみで解説文を欠く。名は「恐ろしい」の上方訛りとされる。神社を守り鳥居から落ちるという性質は昭和以降の書に見え、石燕の絵から想像された後世の解釈と指摘されている。
特徴
ふだんは忘れ去られた神社などに棲みつき、神域を守る。悪戯や不信心を働く者があると、もの凄い音を立て、鳥居や土塀の上から一気に落ちかかって脅かす。相手によっては落下の勢いで押し潰し、命を奪うこともあるといわれ、人を戒める妖怪として語られる。